VERSECオーナー様の声 No.9:杉野工業株式会社様



今回お話を伺った、杉野工業株式会社(三重県鈴鹿市)
工場長 金属溶射管理士
一柳 充様
(作業者)製造部 旋盤チーム
山田 歩夢様
[インタビュー] 2024年10月
[ご導入] 2023年3月(商社:釜屋 株式会社様)

御社の事業内容について教えてください。

当社では、機械加工技術や溶射施工技術を駆使し、摩耗した機械部品の補修および各種機械部品製造、溶接板金、専用機械製作を行なっています。単品や小ロット加工を得意とし、特に特急での短納期対応には絶対の自信を持っています。依頼の90%以上が数量1での相談であり、50年間に及ぶ事業の中で”困ったら杉野、トラブったら杉野(に頼もう)”という信頼関係が地域に根付いてきたと感じています。

ご担当部署の業務内容や特徴について教えてください。

お客様から修理のご依頼を頂くとき、大概の場合、突然の故障や一刻も早く復旧したいというケースがほとんどです。そのため、”どれだけ早く直せるか”ということが重要になってきます。業務の流れとしては”病院をイメージ”していただくとわかりやすいのですが、故障した部品を拝見し、修理の可否や方法を瞬時に判断しなければならず、そのためには、幅広い知識と高い技術力が必要になります。そのような修理や一品ものの対応には汎用機が最適であり、汎用機を扱うことのできる技術者を育てることが重要と考えています。

また、修理対応を行うにあたり、素早く対応することと合わせて、もう一つ重要なことが”品質”です。どれだけ早く直しても、品質が安定していなければお客様の信頼を得ることはできません。そこで、当社では”全品検査出荷”を徹底することで、高い品質とお客様の信頼を維持しています。

汎用旋盤導入前に、御社内で解決したかった具体的な課題や問題点は何でしたか?

確かな技術力を持った作業者を育成するため、新人研修に力を入れています。新たな人材が入社した際には、最初の3か月間で機械加工の原理や旋盤の使い方について徹底的に教育しています。各人のレベルには差があるため、共通の新人教育マニュアルは使わず、一人一人に合わせてマンツーマンで指導を行なっており、その指導員は私(一柳様)が対応しています。一人一人に合わせて丁寧に指導をしている反面、この教育期間を短くしたいという課題がありました。

その課題の解決策としてVERSEC-neoをご選定いただいた決め手は何ですか?

VERSECは操作が簡単で操作説明いらずなので、機械加工の原理や旋盤の使い方に集中できると考えました。当社では、”お客様の預かり品を修理する”という特殊な環境での作業となるため、”失敗が許されない”場合が多くあるということを口酸っぱく伝えています。これは、脅しという意味ではなく、代替となる新品が存在しない場合などもあるためです。従って、より最初の教育が重要となってくるわけです。

従来の汎用旋盤で教育を行う場合、”機械加工の原理”に加えて、レバー操作などの”機械の使い方”も合わせて教えなければならず、指導が煩雑になってしまいます。当社ではVERSEC以外にも15台の汎用旋盤を有しており、機種ごとに操作方法も異なりますが、初心者に教えるにあたっては”機械の使い方”は二の次でよいと考えています。それよりもまずは”機械加工の原理”を体で覚えてもらうことに注力したいという想いがありました。VERSECは、主軸回転中に主軸速度や送り速度を変速できるので、機械を止めずに主軸と送りの関係性を説明でき、初心者にはとても分かりやすい点が選んだ決め手でした。

また、経験のある作業者にとっては、主軸が3000rpmまで回転するため、未知の材料を削る際に切削条件を探索したり、端面を削る際に主軸速度を上げていくことで疑似的に周速一定で加工できるというのも良いと思いました。

VERSEC-neoご導入後、実際にお使いいただいてのご感想はいかがでしたか?

教育面での効果は予想以上でした。これまでVERSECを使って3人の新人を教育しましたが、教育に係る時間は導入前の半分以下になったと感じています。主軸速度と無関係に送りを変速できる「FREEモード」※を活用すると、送りの原理を説明するのがものすごく楽になりました。

新人研修では、3ヶ月の間にクリアすべき最終目標として、”技能検定3級課題”をクリアすることを設定しています。研修中は何度でも練習することを認めており、多い人では100個以上練習した人もいます。ただし、この最終試験の際は”VERSEC使用禁止”としています(笑)。VERSECは操作性と作業効率が良いのですが、既存の旋盤を触る機会も多く、どの旋盤でも同じ時間内で加工できる技量が重要です。そのため、既存の旋盤にも慣れるようにVERSECと従来旋盤を背中合わせで配置し、新人はどちらの旋盤も自由に触れるような環境を用意しています。VERSECで原理や機能を覚えてから従来の旋盤の操作を覚えるのは意外にも難しくなく、すぐに覚えられるというのは嬉しい誤算でした。

現状は、新人教育という場面での活躍がメインですが、実作業という面では先ほどお話した主軸速度を上げながら端面を削る際や径の小さな物を加工する際に、主軸が3000rpmまで回転するのは最高だなと実感しています。

※FREEモード:2つある送りモードのうちのひとつ。従来の旋盤と同様に主軸速度に追従した送り速度(mm/rev)を設定するFEEDモードと異なり、主軸速度とは無関係に送りを自由に変速することができるモードで送り速度(mm/min)を指定する。

今後の展望についてお伺いします。VERSECに期待している点はどこですか?

汎用旋盤の機能としては大変満足しています。強いて挙げるとすれば、若手の作業者から出ている意見ですが、ねじの自動切り上げ機能ですね。”修理でねじをさらい直す”という作業が来た場合、NC機ではできないので、汎用機での切り上げ作業は必須となります。その際に切り上げを自動でできると嬉しいという意見もありましたが、職人として切り上げの技術も必要という想いも一方であります。

また、教育的な観点としては、軸物加工に関する経験とノウハウを新人に積ませたいという想いがあります。私が入社したころは、軸物の加工は汎用機で加工することが主流でしたが、R加工などを含んだ加工などを考慮すると、軸物の加工に関してはNC機で加工するのが主流にはなっています。一方で、NC機に乗らないサイズの修理が来た時は、今でも汎用機で対応する必要があります。しかし、ここ数年の間に入社してきた若手社員では経験値が少なく、柔軟に対応することができません。そこで、VERSECを活用して、汎用機で軸物を加工する・修理するという経験を新人に積ませ、軸物に対する対応力を高めたいと考えています。

今後、さらにVERSECが活躍する場面を増やして、VERSECが持っている機能を最大限に活用していきたいと思います。