Heterogeneous Mizoroki-Heck Reaction 溝呂木-ヘック反応
Tetrahedron, 2018, 74, 1810-1816.

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Tetrahedron, 2018, 74, 1810-1816.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0040402018301893

“A practical method for heterogeneously-catalyzed Mizoroki-Heck reaction: Flow system with adjustment of microwave resonance as an energy source”

Tomohiro Ichikawaa, Masahiro Mizunoa, Shun Uedaa, Noriyuki Ohnedab, Hiromichi Odajimab, Yoshinari Sawamaa, Yasunari Monguchia, c, Hironao Sajikia

a Laboratory of Organic Chemistry, Gifu Pharmaceutical University
b SAIDA FDS Inc.
c Laboratory of Organic Chemistry, Daiichi University of Pharmacy

Apparatus information Reactor size: 100 mm, Maximum power: 100 W (SAIDA FDS INC.)

概要

溝呂木–ヘック反応とは
 溝呂木–ヘック反応は、有機ハロゲン化合物(特にアリールハライドなど)とオレフィン(スチレン誘導体やアクリル酸誘導体など)がパラジウム(Pd)触媒と塩基存在下でカップリングしてオレフィンのアリール化体が生成する反応である。また、本反応は、触媒的に炭素–炭素結合を形成する強力な手法として有機合成において広く用いられている。

一般的な溝呂木–ヘック反応の触媒サイクルを以下に示す。0価Pdがハロゲン化アリールへの酸化的付加、オレフィンへのsyn付加、β水素脱離による生成物の脱離によって進行する。塩基によってハロゲン化水素がPdから還元的脱離して0価Pdが再生する。

関連文献
Mizoroki, T.; Mori, K.; Ozaki, A. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1971, 44, 581.
Heck, R. F.; Nolley, Jr., J. P. J. Org. Chem. 1972, 37, 2320.

一般実験方法 1
 4-ヨードアセトフェノンのDMA溶液(2.5 M)にアクリル酸ブチル(2.0当量)とトリブチルアミン(3.0当量)を溶解して、流速0.15 mL/min、背圧1.5 MPaの条件で10Wのマイクロ波を照射しながら7%Pd/WA30を充填した直管に送液した。直管には下からガラスビーズ(25 mg)、コットン(7 mg)、7% Pd/WA30(200mg)、コットン(7 mg)、ガラスビーズ(250 mg)、を層状に充填した。反応液を送液後、DMA(15 mL)を流速0.15 mL/minで送液して反応管内部を洗浄し、回収した反応液をまとめて処理することで、目的のカップリング体である3-(4-アセチルフェニル)アクリル酸ブチルを93%収率で得た。

実験方法
① 4-ヨードアセトフェノンが2.5 MとなるようにDMAと混合し、アクリル酸ブチル(2.0当量)とトリブチルアミン(3.0当量)を添加して溶解を調製した。
② 直管のマイクロ波照射部に下から順にガラスビーズ(25 mg)、コットン(7 mg)、7% Pd/WA30(200mg)、コットン(7 mg)、ガラスビーズ(250 mg)を層状に充填し、触媒充填反応管を調製した。
③ フロー型マイクロ波装置に触媒充填反応管を設置し、背圧1.5 MPaの条件で10Wのマイクロ波を照射しながら、ポンプを用いて0.15 mL/minの流速で調製した溶液を送液した。
④ 試液を送液後、DMA(15 mL)を0.15 mL/minの流速で送液し、反応管内部を洗浄した。
⑤ 採取した反応液に水を加えて酢酸エチルで抽出した後、水とbrineで洗浄し、有機層をNa2SO4で乾燥した。
⑥ 乾燥剤をろ過により除去したのち、ろ液を濃縮し、重クロロホルム中に溶解した。
 1H NMR測定により3-(4-アセチルフェニル)アクリル酸ブチルが93%内標収率で生成していることを確認した。
⑦ NMR測定後の反応混合物を酢酸エチルに溶解して、飽和CuSO4水溶液と水で洗浄し、再度Na2SO4で乾燥した。
⑧ 乾燥剤をろ過により除去したのち、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて精製し(n-hexane/EtOAc = 10/1)、91%単離収率で生成物を回収した。

実験結果提供:岐阜薬科大学 佐治木弘尚先生、山田強先生、第一薬科大学 門口泰也先生
装置情報:100 mmキャビティ、100W、固定化触媒

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