Claisen Rearrangemet #2 クライゼン転移反応2
J. Flow Chem., 2018, 8, 147–156.

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J. Flow Chem., 2018, 8, 147–156.
Open Access DOI: https://doi.org/10.1007/s41981-018-0021-6

“A continuous-flow resonator-type microwave reactor for high-efficiency organic synthesis and Claisen rearrangement as a model reaction”

Emiko Koyama, Noriko Ito, Jun-ichi Sugiyama, Joshua P. Barham, Yasuo Norikane, Reiko Azumi, Noriyuki Ohneda, Yoshinobu Ohno, Takeo Yoshimura, Hiromichi Odajima, Tadashi Okamoto

Equipment information
Reactor size: 100 mm, Maximum power: 100 W (SAIDA FDS INC.)

概要

クライゼン転移とは
 クライゼン転位は、アリルビニルエーテル構造をもつ化合物の熱的[3, 3]-シグマトロピー転位であり、対応するγ, δ-不飽和カルボニル化合を生じる反応である1,2

 また、アリールアリルエーテル構造を有する化合物においても、クライゼン転位は進行する。得られるカルボニル化合物はケト-エノール互変異性により直ちにフェノール型構造へと異性化するため、フェノール誘導体の合成に有用である1,2

 なお、アリル基上に置換基が存在する場合、下図の例では転位生成物は次のようになる3

 酸素が炭素に置換された化合物においては、Cope転位という同様の[3, 3]-シグマトロピー転位が進行する4。Cope転位は可逆反応であるが、クライゼン転位は熱力学的に安定なため不可逆に進行する。このため、特にオルト位に置換基が存在する場合 (R)、クライゼン転位によって生じるケト化合物がさらなるCope転位を起こしやすく、アリル基はOH基のパラ位に導入される3

参考文献
1. Claisen, L. Ber., 1912, 45, 3157-3167
2. Tarbell, D. S.; Org. Reactions, 1944, 2, 2-48.
3. Rhoads, S. J.; Raulins, N. R. Org. Reactions, 1975, 22, 1-252.
4. Cope, A. C.; Hardy. E. M. J. Am. Chem. Soc., 1940, 62, 441-444.

論文概要 (J. Flow Chem., 2018, 8, 147–156.)

 アリル1-ナフチルエーテルのクライゼン転位は、2.0 M in CPME, マイクロ波 50 W一定出力、流速 1.0 mL/min、反応容器スパイラル管A(マイクロ波照射部容量1.0 mL),、背圧2.5 MPaの条件で、フロー型マイクロ波装置100 Wを用いておこなった。結果として、o-クライゼン転位生成物である2-アリル-1-ナフトールが、10.1 g/30min (収率91% , 20.2 g/h)で得られた。また、p-クライゼン転位生成物の4-アリル-1-ナフトールは0.29g/30min (収率2.6%, 0.29 g/h)で得られた。

実験方法
 ① 溶液供給瓶に、アリル1-ナフチルエーテルが2.0 MとなるようにCPMEと混合しA液とした。
 ② 別途、CPME溶媒のみを溶液供給瓶に入れた(B液)。
 ③ AおよびB液が入った瓶それぞれに、ポンプと繋がった吸入口管を入れた。
 ④ エアトラップが満たされるようシリンジを用い手動でB液を吸引した。
 ⑤ PC画面から流量1.0 mL/minの設定で、B液をフロー型マイクロ波装置に送液した。
 ⑥ PC画面表示を見ながら、手動でBPRを操作し背圧を2.5 MPaにした。
 ⑦ 出力50 W一定でマイクロ波を照射した。
 ⑧ 温度が一定になった後、溶液の供給をA液に切り替えた。
 ⑨ BPR後段のチューブから排出される溶液を9 ml廃棄した後、反応溶液を30分採取した。
 ⑩ 採取した反応溶液から溶媒を減圧留去した。
 ⑪ 得られた反応混合物のNMR分析から、o-クライゼン転位生成物である2-アリル-1-ナフトールおよびp-クライゼン転位生成物である4-アリル-1-ナフトールは、それぞれ収率91.0% (486.2 g/day)および2.6% (14.0 g/day)で得られることがわかった。
 ⑫ この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(溶媒:クロロホルム)により精製し、2-アリル-1-ナフトールを9.17 g (収率83%)、4-アリル-1-ナフトールを0.29 g (収率2.6%)で単離した。

実験結果提供:産業技術総合研究所 小山恵美子先生、杉山順一先生、Joshua P. Barham先生、則包恭中央先生、阿澄玲子先生
装置情報:100 mmキャビティ、100 W

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